コンペの打ち合わせ

ダメモ_コンペ

制作会社に勤務していた時期、ある企業からデザインコンペ参加の打診がありました。これそのコンペに関する打ち合わせを社内で行った時のメモ書きです。その企業からは長年社内報などの仕事を請け負っていて、会社案内パンフのリニューアルに伴いコンペを開催するのでぜひ参加してほしい声をかけてもらいました。いわゆる大企業とよばれる企業からのオファーだったので、仕事を取れたら良いなと思いつつも、コンペの準備にはそれなりに時間が取られることに対する本音がメモに書かれています。その企業との今後の付き合いを考えると、失望されないレベルのものを出さないと今の仕事も失注するかもしれないというプレッシャーもありました。

コンペとは

一般的にデザインコンペ(Design Competition)とは特定のテーマや課題に基づいて競い合うイベントやコンテストのことを指しますが、主催者や規模によってその有り様はそれぞれ異なります。今回のケースはすでに付き合いのある数社に声をかける比較的小規模なものでした。ちょうど世の中的にコンプライアンスどうのこうのが流行っていた時期で、大きい企業ほど随意契約のように見られることを嫌い、仕事を振る根拠を求めるために労力を注いていたように感じます。主催する側もまあまあ大変だったと思います。

コンペは総力戦

まずは情報収集

相手企業の面識ある社員から話を伺うのはもちろん、その企業が今どこを向いていてどのように思われたいのかをあらゆる手段を使って集めます。相手のブランドをよく知ることから始めます。それと、デザインに合わせて見積もりも出すのでどの程度予算をとっているのかも見極めないといけません(向こうから「大体このくらい」と伝えてくる場合もあります)。

アウトプットイメージ

つぎに戦略を練る

相手の求めているものがなんとなく見えてきたら、そのニーズに何をプラスできるかをスケジュール的にどこまでできるかも含め考えていきます。顧客対応をしている営業、エディター、ライター、デザイナーなどが意見を出し合い、全体の構成からコピー、ビジュアルへと形にしていきますが、まずは大枠を決めます。例えば、相手企業が「SDGs」っぽいものを強く発信したいと思っていると仮定し戦略を練るとします。

〈その場合のパンフレット提案内容〉

・地球環境に配慮した用紙とインクを使用したとわかる認証マークを入れてエコをアピール

・水なし印刷で地球環境に配慮をアピール

・パンフレットのページ数を減らし二次元コードでwebへ誘導 など

この提案内容を実現するには、対応できる印刷会社をあらかじめ決めて見積もりも出してもらいます。ページ数も変わるので新たにページネーションを考えなくてはなりません。

デザインコンセプトを決める前に、どういった理由でこういったアウトプットになるという大枠を決め、全体で共有し、これを覆すことのないように進めます。先に進めていくにしたがって「っていうか」とか「そもそも」的な発言(私含むデザイナーが言いがち)が出ることがありますが、スケジュールもあるのでとにかく進めます。

デザインコンセプトを決めで落とし込んでいく

大枠が決まったらデザインコンセプトを決めていきます。前述の「SDGs」っぽい部分をハードだとすると、こちらはソフトの方ということになります。その企業のカラーや活動などの具体的なことを分かりやすくビジュアルで表現することで、かつ相手のニーズの延長線上にあることがマストです。そのデザインコンセプトをまとめるのは大抵クリエイティブ・ディレクターというようなポジションの人になります。

コンセプトにも様々あって、分かりやすいテーマでしっかり作って、裏テーマを仕掛けたり、それ自体が一番クリエイティブな仕事だったりします。そこに合わせてライター、デザイナーが手を動かして形にしていきます。大きな企業は多くの部門・活動がたくさんあって分社化もされていたりと、全てを網羅できる具体性のあるキャッチコピーを作るのはとても難しいと思います。各部門ごとに具体的な活動内容を表す言葉を持っていたりするので、それをまとめるライターは大変です。

数パターンは作る

コンセプトに沿った抽象的なイメージを作成。相手が勝手に良いよう解釈してくれることも

コピーを含め全体の方向性が決まったら、そのデザインコンセプトに沿ったものなら数パターンか作成します。その後、最終的には社内で精査された三パターンくらいをプレゼンに持って行くのが一般的ではないでしょうか。表紙の別パターンだったり、レイアウト違いだったり、選択肢を持たせることでなるべく相手の好きに刺さる可能性を上げる戦略の一つです。提案する上で、相手のニーズを的確に捉えているなどの一定条件をクリアすると、後は担当者の方々の好みで決まること多いと感じます。逆に言えば好きか嫌いかまで持っていければ、デザイナー次第ということになります。

全員が納得できたとしても

自社内で好評だったとしても、相手の求めていそうな条件を全てクリアした完成度の高いアウトプットをうまくプレゼンできたとしても、相手に刺さるか刺さらないかはその時次第だったりします。通ったとしてもプレゼン時に広げた風呂敷の大きさに後で気づくこともあり、加減が難しいのがコンペです。